ロールプレスによるスギ表層WPCの製造

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ロールプレスによるスギ表層WPCの製造

[出典]
  • 藤澤 泰士・鷺岡 雅
  • ロールプレスによるスギ表層WPCの製造
  • 2002年3月
  • 富山県林業技術センター研究報告

ロールプレスによるスギ表層 WPCの製造
藤澤 泰士・鷺岡 雅

材質が軟質で,傷つきやすいスギ材を住宅用床材料として利用するため,ロールプレスによる表層 WPC化の方法を検討し,最適ロールプレス条件を見出した。その結果は以下のとおりである 。
1 )スギ材表層のみを選択的に圧縮できるロールプレス装置を考案した。
2) このロールプレス装置による最適な表層圧縮条件について検討した結果,上下ロール組み合わせが鉄/樹脂,上ロールの回転数が下部ロールより 2 %遅い設定,上部ロール温度150℃,材表面温度20℃であることを見出した。その条件によってスギ表層を選択的に最大 2mm圧縮することができた。
3) ロール圧縮部に飽和共重合ポリエステル樹脂を浸せき処理により注入した後,加熱硬化させてスギ表層 WPCを作製した。その表面性能は,フローリング JASの耐摩耗性を満たし,衝撃強さおよびブリネル硬度は,無処理材と比較して,各々 10倍以上お よび 3倍以上の値を示 した。

1.はじめに
木材の表面物性を改善する方法として WPC処理は効果的であるが,同時にコストアップにつながり,実用化の大きなネックになっている 。また,針葉樹材であるスギは, 一般に広葉樹材と比較して樹脂等の注入性が低く,内部への均一な浸透が困難であるため 1)WPC材料としては適していない。 したがって,スギ WPC製品を開発するためには WPC処理の低コスト化とスギ材の樹脂注入性の改善を行う必要がある 。
これらを同時に解決する方法として,浸せき処理のみで木材内部に液体を注入する横圧縮処理技術を利用して,床材として必要な表面物性が要求されるスギ材表層部のみに樹脂を注入し,硬化させる表層WPC化を試みた。
前報 2.3)では,横圧縮処理による板目面からの樹脂注入性改善効果を確認するため,平板プレス機を用いて全層横圧縮処理したスギ材板目面からの飽和共重合ポリエステル樹脂の注入性を検討した。その結果,横圧縮率の増加に伴い,ポリエステル樹脂の浸透深さが増加することが明らかとなった。本報告では,スギ材表層部のみに樹脂を注入するため,表層部のみを選択的に横圧縮する ロールプレス装置を考案し,ロールプレスの適正な表層圧縮条件を検討した。

2.実験方法
2. 1 供試材料
県産タテヤマスギ辺材の気乾材(比重0.35,含水率13%,無節材)を用いた。試験材の寸法は, 100(T) x 15 (R) x 900 (L)mmとした。
2.2 表層圧縮用ロールプレス装置の考案木材表層を選択的に圧縮できるロールプレス装置(図- 1、2)として,以下の仕様をもたせた。

 

2.3 表層圧縮するためのロールプレス条件
スギ試験材の上面と下面の圧縮量を変化させるために,下部ロール材質を鉄ロール,樹脂ロール(硬度目。)お よびウレタンゴムロール (硬度60℃)の3種類にした。 また,ロールプレス装置の表層圧縮の処理速度を向上させるために,上部ロール回転数を下部ロール回転数より:t:5 %変化させ,最適な表層圧縮条件を求めることとした。このとき,上部ロール温度150t,材表面温度20t,圧縮量 2mm,送り速度は 1,5, 10および、15m/minとした。
さらに,ロールプレス装置の圧縮処理の効率を向上させるためには,熱による木材の軟化作用を利用することが有効であると考え,上述の実験で求めた最適なロールプレス装置の設定条件下で,材表面温度を20,80, 120および160℃の 4水準とし,上部ロール温度140,150, 180および200℃に変化させた場合の各温度条件の表層圧縮効果を評価した。

2.4 上面および下面圧縮量の測定
試験材の上面および下面の圧縮量を測定するため,試験材側面に厚さ (R方向)を 2等分する中心線を引き,その中心線から上方向(木表方向)を上部,下方向(木裏方向)を下部とし,各々の圧縮量を測定した。

2.5 表層圧縮効果の評価
表層圧縮効果を評価するため,ロールプレス処理1分後の試験片厚さを測定し,試験片の厚さ回復率を次式により算出した。

 

2.6 注入樹指
溶液粘度が低く,熱軟化点が低い低分子タイプの樹脂として飽和共重合ポリエステル樹脂 (UE-3350,ユニチカ製)を選定した(表ー 1)。樹脂は MEK溶媒で25%濃度の樹脂溶液に調整した。 また,硬化剤として 2,4-トリレンジイソシアネート(2 , 4-TDI) を樹脂の活性 OH基価の 3倍量添加した。

2.7 樹指注入処理および硬 化処理
表層圧縮処理された試験材は樹脂溶液中で 1時間浸せき処理した。樹脂注入試験材は60℃オープンで24時間乾燥, MEK溶媒を揮散させた。樹脂の圧縮面からの浸透深さを測定するため,試験材は表層圧縮面を除き,他のすべての面をエポキシ樹脂でコーティングした。
次に,樹脂注入した試験材は平板プレス機(高木金属工業製)を用いて180℃で30分間加熱硬化した。試験材の成型厚さは14.5mmのディスタンスパーを用いて調整した。

2.8 スギ表層 WPCの性能評価
表層圧縮量0.5,1.0および2.0mmの圧縮処理材にポリエステル樹脂を注入し,樹脂浸透深さを調製したスギ表層 WPC作製し,住宅用床材に求められる各種性能(フローリング JAS摩耗 A試験 (1kg, 500回),鉛筆硬度,デユポン衝撃強さ,ブリネル硬度,吸水膨潤率)を測定した。

3.結果および考察
3. 1 材質の異なる上下ロール組み合 わせが上面の表層圧縮量に及ぼす影響ロールプレス装置の下部ロール材質を樹脂,鉄およびウレタンゴムとした場合のスギ材上面の圧縮量と下面の圧縮量を衰ー 2に示す。試験材の全圧縮量を 2mmに設定したため,試験材の上面の圧縮量と下面の圧縮量の合計は2mmとなる。下部ロールが樹脂ロールの場合,上面の圧縮量は1. 90-1. 95mmで,スギ材上面のみが選択的に圧縮されていた。鉄ロールの場合は,上面の圧縮量は1.00-1. 20mmで,上面と下面がほぼ同じ比率で圧縮されていた。 このように,下部ロールの材質を変えることにより,上面の圧縮量を変化させることができた。

上面の圧縮量が異なる理由は,下部ロール材質によってスギ材表面に負荷される圧力が異なるためと考えられる 。すなわち,上部ロール/下部ロールが鉄/樹脂の場合は,プレス時に樹脂ロールがロール圧により変形することによって,スギ材下部と下部ロールとの接触面積が増大し,下面に負荷される圧力が軽減された結果,上面のみが圧縮されたと考えられる 。一方,鉄/鉄の組み合わせの場合は,上下ロールとも圧力による変形を引き起こさないため,挿入されたスギ材の上面と下面に同じ圧力が負荷された結果,木材の上面と下面の圧縮量がほぼ同ーとなったと考えられる 。 また,鉄/ウレタンゴムの場合は,設定した 2凹の圧縮を行うことができなかった。その理由として,軟質なウレタンロールがロール圧力により大きくへこんだ結果,試験材上下面に負荷される圧縮圧力が軽減し,設定した圧縮を行うことができなかったと考えられる。

 

3. 2 上下ロ ールの回転数差が上面圧縮量に及ぼす影響
上面の圧縮量と送り速度の関係を図-3に示す。上下ロールは鉄/樹脂にした。上面の圧縮量は,送り速度 1m/minで1.90mm以上を示しが, 5 m/minでは1.7mm, 10m/minでは1.2凹と減少し, 15m/minに達するとその値はほぼ 1mmとなり,送り速度の増加に伴い,上面の圧縮量は急激に減少した。
送り速度の増加に伴って上面の圧縮量が低下したのは,圧縮する上部ロールとスギ上面との接触時聞が短くなったこと,あるいは3.1で述べた樹脂ロールの変形が送り速度の増加に伴い減少したことが原因と推察される。
上部ロールの回転数を変化させてロールプレスを行った結果を図ー 4に示す。下部ロールの回転数は送り速度と連動させている。
上部ロ ールの回転数を下部ロールより 1-2%低くした場合は,送り速度が増加しても上面の圧縮量に大きな変化は見られず,安定して 2醐近くの上面の圧縮量を得ることができた。 しかし,上部ロール回転数を下部ロールより 1-2%高 くした場合は,上下ロールが同じ回転数の場合 と同様,送り 速度の増加に伴い上面の圧縮量は減少した。
鏡面仕上げされている上部ロール(鉄ロール) とスギ材との聞の摩擦抵抗は低く,上下ロールの回転数に差を生じさせると,ロール間に挿入されるスギ材表面に上部ロールが滑るように擦り合わされる 。ここで,プレス部の試験材が挿入される側を入口側,圧縮されて出ていく側を出口側とすると ,上部ロール回転数を速くした場合,材表面は入口側から出口側の方向へと擦り合わされ,遅くした場合は反対に出口側から入口側の方向へと擦り合わされる 。
すなわち,回転数が速い場合は,上部ロールの擦り合わせにより生じる抵抗力が送 り方向と同じ方向に働くため,試験材表面は上部ロールにより引っ張
られるようになる 。遅い場合は,試験材上面に送り方向に対して反対方向にロールの抵抗力が働き,上部ロールが試験材表面を圧縮するようになる 。この
送り方向と反対に作用する圧縮力に より,上部ロールが試験材表面に食い込むように働き,送り速度が向上しても試験材上部を安定して圧縮することが可
能となったと推察される。
上部ロー ルを下部ロールより 2%遅くして圧縮処理したスギ材の横断面を見ると, 図-5に示す ように表層が均一に圧縮されていることが観察される 。
平板プ レスに よる放射方向の圧縮処理では,早材組織の座屈が全層に見られるのが一般的であるが4),試作した ロールプレス装置を用いることによって,
早晩材の区別なく,試験材上面の表層のみを選択的に圧縮できることが明らかとなった。
また,上下ロール速度に 2%を越える差を生じさせると,上部ロールと木材表面との摩擦抵抗が大きくなり,スギ材を上下ロール聞に挿入することができなくなった。

 

3.3上部ロール温度と材表面温度が表層圧縮に及ぼす影響

上部ロール温度と材表面温度が厚さ回復率に及ぼす影響を図-6に示す。
材表面温度が20℃の場合,厚さ回復率は上部ロール温度150℃で15%と最も小さい値を示し,その前後のロール温度140.Cおよび160tでは各々 35%およ
び25%と増加した。また,材表面温度80℃,120℃および160℃の場合,ロール温度180℃以下で40%程度であった厚さ回復率は,ロール温度200℃で急激に増加し90%となった。
表層圧縮処理は, ロール温度140℃未満では熱不足で,木材の熱軟化が不十分となり,圧縮そのものが不可能であったが,ロール温度140℃以上で圧縮が可能となった。このとき,圧縮される木材表面から折れるような小さな音が発生していたことから,ロール温度140-180℃での圧縮は微細な破壊を伴う圧縮変形であると推察される 。
また,材表面温度80℃以上,ロール温度200℃で厚さ回復率が増加したのは,スギ材が十分に熱軟化されていたため,圧縮変形が戻りやすい状態であったこと 5)が要因であると推察される 。このとき,上部ロールと接触するスギ材表面には,ロールの熱により赤褐色に変色する熱劣化が生じていた。

3.4 樹指注入性に及ぼす上部ロール温度の影響
上部ロール温度(材表面温度20t一定)が樹脂浸透深さに及ぼす影響を図-7に示す。上部ロール温度150℃のとき,表層圧縮面からの樹脂浸透深さは1.10mmと樹脂が最も深く浸透していた。樹脂浸透深さは160℃,140℃, 180℃の順で浅くなり,180℃では0.45mmを示した。このように上部ロール温度により樹脂浸透深さが異なる原因は,異なるロール温度条件で圧縮処理した試験材の厚さ回復率であると考えられる 。ロール温度150℃および180℃で圧縮した試験材の厚さの経時変化を図-8に示す。
ロール温度150度で表層圧縮したものについて,圧縮時の材表面温度20℃の厚さ回復率は, 5分後に25%に達し,以降一定となるが,その他の材表面温度条件では,放置時間の増加に伴い厚さ回復率が増加した。ロール温度180℃で圧縮した試験材は,材表面温度に関わらず,2分後に厚さ回復率がほぼ70%まで増加し,以降一定となった。ロール温度150℃のとき,樹脂が最も深く浸透し,ロール温度180℃で浅く浸透したことを考慮すると,この厚さ回復率の経時変化と樹脂注入性は密接に関係していると考えられる。
木材の圧縮には,木材の細胞壁等を破壊する圧縮変形と,熱や水などの軟化による圧縮変形がある 。一般に,細胞を破壊する圧縮変形は,水による膨潤などの作用が働かない限り,厚さ回復することはない 6)。 このように圧縮変形された木材を液体中に浸せきすると,液体は破壊された細胞壁などに沿って木材の内部と浸透する 7)。 ロール温度150℃ (材表面温度200℃ の圧縮材が,厚さ回復率が低く,板目面から樹脂が最も深く浸透した原因は,この組織破壊を伴う圧縮変形が影響したためだと思われる。
一方,熱などに よって十分軟化した木材を圧縮すると,木材組織は破壊されることなく変形する 6)。この圧縮変形は容易に厚さ回復する。この材を液体中に浸せきすると,膨潤による厚さ回復によって,液体は繊維方向の仮道管等に沿って木口面から材内に浸透する 8)。ロール温度180℃の圧縮材が,厚さ回復率が高く,板目面から樹脂がほとんど浸透しなかったのは,この組織破壊が生じていない圧縮変形が大きく影響したためだと思われる。

3.5 最適ロールプレス条件
スギ表層WPCを製造するためのロールプレス条件は,スギ材上面のみを選択的に圧縮すること,送り速度が増加しでも安定して圧縮処理を行うこと,樹脂を浸透させるため木材組織を破壊する圧縮変形を木材表面に加えることが必要があると考えられる。これらの条件を満たす最適な表層圧縮条件は,上下ロール組み合わせが鉄/樹脂,上ロールの回転数が下部ロールより 2%遅い設定,上部ロール温度150℃,材表面温度20℃であり,その条件でスギ表層を選択的に最大 2皿圧縮することが可能である。

3. 6 スギ表層 WPCの性能
樹脂浸透深さを変化させたスギ WPC材の表面性能表- 3に示す。住宅用床材に求められる重要な指標である耐摩耗性(摩耗減量)は,樹脂浸透深さ0.28mm(表層圧縮量0.5凹)の WPCは無処理材と同じ0.02gを示したが,樹脂浸透深さ O.72mm(表層圧縮量1.0mm)以上の WPCは0.00gと優れていた。また,表面硬度は樹脂浸透深さの増加に伴い急激に性能が向上し,浸透深さ 0.72mmの WPC材と無処理材を比較すると,プリネル硬度で 3倍,衝撃強さで10倍向上していた。一方,作製したスギ表層 WPCの吸水厚さ膨潤率は,全ての表層 WPCで約9.8%となった。結果として,樹脂浸透深きO.72mm以上で作製したWPC化したスギ表層 WPCは,フローリング JASの耐摩耗性およびす法安定性を満たしており,住宅用床材として十分使用できることが明らかとなった。また,表層部のみの WPC化のため,コスト的にもかなり安価になるものと思われる 。

参考文献
1)基太村洋子:森林総研研報, No.367, 1-52
(1994).
2) 藤津泰士,水本克夫,高野了一 :第45回日本木
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6)則元京:木材研究・資料, 30, 1・15 (1994).
7) H. Gunzerodt, 1.C. F. Walker, K. Whybrew :
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8 )酒井温子:木材工業, 49 (12), 604・609(1994).