熱処理技術による床暖房用スギ、ヒノキ無垢材の開発

TEL:03-3522-4169

受付時間 9:00-18:00[水曜定休]

(すぎ)

樹種説明
施工例
印刷

熱処理技術による床暖房用スギ、ヒノキ無垢材の開発

[出典]
  • 野地 清美・政岡 尚志
  • 熱処理技術による床暖房用スギ、ヒノキ無垢材の開発
  • 2012年3月
  • 高知県立森林技術センター研究報告 = Bulletin of Kochi Prefectural Forest Technology Center

抄録
熱処理技術による床暖房用スギ・ヒノキ無垢材の開発を試みた結果、スギ材では130、140℃の水蒸気で加圧加熱処理することによって、無処理材よりも寸法安定性が高くなる傾向を示した。ヒノキ材では同様な温度域での処理では無処理材との違いは認められなかった。スギ材、ヒノキ材ともに、処理温度が高いほど、また処理時間が長いほど、材色変化が大きく、色むら(辺材と心材の色の違い)が解消できることが分かった。140℃で熱処理したスギ材とヒノキ材について、床暖房用床材の実用的な試験である熱耐久試験を行い、市販のスギ材とヒノキ材と比較したところ、スギ熱処理材では隙間や段差がスギ市販材よりも小さい傾向で全体的に良い性能を示したが、ヒノキ熱処理材ではヒノキ市販材の方が隙間が小さい値を示し総合的に優れていた。

 

熱処理技鋳による痕嬢欝関スギ、ヒノキ無垢材の開発
野地溝義、致問調志(高知嬢須鴫林業事務所)

概要:
熱処理技術による床暖房用スギ・ヒノキ無垢材の開発を試みた結果、スギ材では 130、140℃の水蒸気で、加圧加熱処理することによって、無処理材よりも寸法安定性が高くなる傾向を示した。ヒノキ材では間接な温度域での処理では無処理材との違いは認められなかった。スギ材、ヒノキ材ともに、処理温度が高いほど、また処理時間が長いほど、材色変化が大きく、色むら(辺材と心材の色の違し、)が解消できることが分かつた。 140℃で熱処理したスギ材とヒノキ材について、床暖房用床材の実用的な試験である熱樹久試験を行い、市販のスキ、材とヒノキ材と比較したところ、スギ熱処理材では隙間や段差がスギ市販材よりも小さい傾向で全体的に良い性能を示したが、ヒノキ熱処理材ではヒノキ市販材の方が隙関が小さい値を示し総合的に優れていた。

1. はじめに

鍵康や快適性への志向が高まる中、室内のハウスダストが少なく、足先から緩めて室内全体を快適な温度環境に保つ床援房が、新築住宅、リフォーム住宅を中心に急速な伸びを示している(図1)その床援房用の仕上げ材としては、複合フローリング(化粧貼りした合板)が圧倒的なシェアを出めており、単層フローリングであるスギやヒノキの無垢材(接していない抜など)は、接着剤等の薬剤を使用していない安心素材であり、歩行時の弾力感、重厚感、温かみ、調湿機能等の良さがある反面、寸法変化による隙間や幅反りや微細な表面割れが発生し易いこと、傷が付き易いこと、更には辺材と心材の色の違いによる色むらがあることなどが要因で、現在あまり利用されていない。市販されている床暖房用むく材陪品の中には、寸法安定性の向上や耐クラック性・耐摩耗性の改善等の課題を解決するために、ウレタン塗装したり、仕上がり含水率を通常よりも下げたり、実加工の形状を工夫するなどの対策を講じているものもみられる。寸法安定性の向上として、熱処理による効果が一般的に知られているが、最近では欧州を中心にノンケミカノレな木材保存法としてサーモウッド処理Plato処理などの高圧蒸気を用いた熱処理技術 1)が開発され、一部は国内でも市販されている。しかし、国産材に適用した処理技術の蓄積はまだ少ないことから、新しい熱処理技術の開発が課題となっている。
そこで、本研究ではスギ・ヒノキの無垢材を床暖房用の床材として利用するために必要な、寸法安定性の向上や色むらの解消等を確保できる熱処理技術の確立を目指して研究に取り組んだので、以下報告する。

 

2. 実験
試験は、熱処理条件を検討する試験と、その試験結果で特定できる条件で熱処理した材を用いて、床暖房用床材の実用的試験である熱耐久試験の 2つに大別される。

2. 1熱処処理件検討試験
2. 1. 1試験体
熱処理条件検討用試験体は、図 2に示すとおり、人工乾操した 3m長材から 60cm長試験体を 4枚採取して、 4条件に配分し、 1条件あたりの試験体をスギ材で 12枚、ヒノキ材で 8枚として、に供した。  試験体の断面寸法は、スギ材が厚 18X幅 105mm、ヒノキ科が厚 20X幅 108mmであった。 試験体の両端で採取した試験片から全乾法含水率を求めた。

2.1.2熱処理条件と熱処理装置
図 3に示す加圧加熱蒸気処理装置 により 60cm長試験体を熱処理した。処理条件として、処理時間は3,6,9の 3種類と無処理を加えた 4条件、処理温度は 110、130、140℃の 3条件とした。

2. 1. 3熱処理材の評価項目
熱処理した試験体について、材色変化の違いを各条件却に比較するとともに、表面割れ、そり、まがりり、ねじれ等発生状況を確認、した。また、熱処理の効果の 1つである寸法安定性については、図4に示すように恒握恒湿槽に試験体を設置し、乾操条件と湿潤条件を繰返し与えて、その間の含水率の変化や、巾と厚さの寸法変化や、幅そり発生状況を測定して、寸法安定性を評価した。与えた温湿度環境は、居住環境を考慮した設定とし、乾燥条件は乾球温度 25℃、関係湿度 30%を 48時間とし、極潤条件は 25℃、90%、48時間として、 2サイクル繰返した。
各条件の試数体の材色変化や寸法安定性試験結果から、適正な熱処理条件を特定した。

2.2熱謝久試験
2.2.1 試験鉢
前述の熱処理条件検討試験で特定される条件で処理ーしたスギ、ヒノキ 2m長材を、厚 12X働き幅 90×長 1800mmに加工(本実加工、そり止め加工を含む)し、図5に示す基準床(幅 1800X長 2700mm)上に施工して、試験に供した。 基準床は、土台 (30X50mm角)と根太(90mm角)と 12mm厚構造用合板で構成されていて、その上に電気式床緩房用フィルム(A社製 PTCヒーター厚 0.5X幅 900X長 1800mm)を 3枚施工し、熱処理した材を設置した。また、ヒノキ市販材のみウレタン塗装で、熱処理材とスギ市販材は無塗装とした。

2.2.2試験方法
財団法人ベターリビングが定めた試験方法に準拠して、床暖暖房用床材の性能評価試験である熱耐久試験を実施した。試験体を連続 1100時間加熱して、その開の規定された時間時(初期(加熱前)、100、300、600、1100時間)に、床材の幅寸法や幅反り、床材間の幅方向と長さ方向の隙間や段差、含水率、表面温度等の変化を測定した。各項自において、幅寸法はデジタノレノギスを、隙間はシックネスゲージを、幅反りはディプスゲージを、合水率は電気抵抗式合水率計を、床材表面温度は T型熱電対をそれぞれ用いた。試験体を設置した室内視湿度環境は、関係湿度は制御せず、乾球湿度20℃一定の条件とした。幅方向と材長方向の隙開や段差の測定点数は、スギ熱処理材とスギ市販材とヒノキ市販材が 10個所、ヒノキ熱処理林が 5掴所とし、その他の反りや幅寸法は 8個所とした。測定個所には、じゅうたんを敷いた個所と1日1回 30ccの水を散布する散水個所を設定した。なお、含水率計含水率は加熱前に 5~8%の値を示していたが、加熱を開始すると1回目の測定時点から 4%以下の表示となって測定がが不明となったことから、結果には示していない。

 

3. 試験結果と考察
3. 1熱処理条件検討試験
3. 1. 1熱処理後の試験体の性状
熱処理することによってヒノキ試験体の表面色は変化するが、図 6に示すとおり、処理温度が高いほど、処理時間が長いほど、変色が大きくなる傾向で、スギ材でも同様な結果であった。 110℃処理では、心材と辺材の区別がつく程度の色変化であったが、 130℃や140℃処理ではほとんど区別できないほど材色が変化していて、色むらが解消されていた。特に、 140℃処理では 3時間処理でも色むらを感じさせない程度まで変化していて、その効果が大きかった。熱処理による表面割れやそりやねじれ等の損傷は、スギ材.ヒノキ材ともに今回の条件では認められなかった。試験体の全乾法含水率は、摺 7に示すとおり、処理特に 10%以下の材の場合、熱処理によって 5ポイント以上高くなる傾向を示し、その後約 2週間の室内放置では 10%以下にはなりにくいことから、熱処理後に仕上げの乾操が必要であると考える。

3. 1.2スギ熱搭理試験体の寸法安定性
スギ 140℃熱処理試験体の寸法安定性試験結果を、処理時間別に図8に示す。
全乾法含水率の変化は、110℃処理条件では処理材と無処理材の差がほとんどなかったが、 130、140℃処理条件では処理材が無処理材より低い含水率域で推移し、特に 140℃処理材ではその傾向がより明確で処理時間が長いほど含水率が低くなる傾向を示した。幅方向の寸法変化率について処理材と無処理材を比較すると、110℃処理条件では差がほとんどなかったが、 130、 140℃処理条件では全乾法含水率と間様に処理材の方が小さい傾向を示し、熱処理による効果が認められた。処理時間の違いが寸法変化率に与える影響をみると、今回の処理条件では処理時間の長短と寸法変化率を関係付ける傾向は認められなかった。(図9、図10)。

 

3. 1.3ヒノキ熱揺理試験体の寸法安定性
ヒノキ 140℃熱処理試験体の寸法安定性試験結果について、処理温度別の全乾法含水率変化を図11に、幅寸法変化率を図 12にそれぞれ示す。全乾法含水率は、スギ材とほぼ同様に、無処理材の方が高く、処理時間が長くなるに従い低下する傾向を示した。ヒノキ熱処理試験体の幅寸法変化率の変化をみると、スギ熱処理試験体と異なり、無処理試験体と比較しでもあまり違いみられず、処理時間と変化率との関係は認められなかった。

3.1.4適正な熱矩翠条件
前述の熱処理後の試験体の性状や寸法安定性試験結果から、辺材と心材の色むらを解消し、一定の寸法安定性を付加できる適正な熱処理条件を、スギ材の場合 140℃の 3時間処理とした。ヒノキ材の場合法、今回採用した温度範囲では寸法安定性を付与することはできなかったが、スギ材と同様に色むら解消には処理温度が高いほど良い結果を得ることができたことから、スギ材と同様に、140℃の 3時間処理とした。

3.2熱耐久試験
3.2.1 室内環境と床材表面温度変化
熱耐久試験中の室内温湿度環境の変化を図 13に示す。温度は 20℃をほぼ維持し、関係湿度は 50%から 80%の範囲で変化していた。
熱耐久試験中の床材 5個所の平均表面溢度の変化を図14に示す。 32℃付近を中心に 2℃前後の幅で推移していた。図には示していないが、じゅうたんを敷いた個所は 40℃付近で推移し、ほかの個所よりも高い値を示していた。

 

3.2.2スギ熱処理試験体の性能
熱耐久試験中のスギ熱処理試験体の幅寸法変化率を、図15に示す。 140℃C熱処理試験体の寸法変化は、スギ市販材と比較して非常に小さく、約約半分の変化に留まっており、熱処理の効果が認められた。また、熱処理試験体は約 700時間以降ほぽ横ばい状態で推移したが、市販材はその後も変化していてその差がさらに拡大する傾向であった。

熱耐久試験結果のうち、幅方向隙間の変化を図16と図17、長さ方向と幅方向の隙間や段差や幅反りの変化を表 1にそれぞれ示す。幅方向隙間の変化は、プラス側で隙簡が広がり、マイナス側で際問が狭くなることを示すが、全体的に隙間が広がる傾向で、スギ熱処理材は約 700時間以降、幅寸法変化率の推移と同様に横ばい傾向で、試験終了時点では表に示すとおり、 lmmを超える隙間が生じていた。反りは、全個所でマイナス側を示し、床材下面が加熱されることによって、上面が凸面に変形した。熱耐久試験結果を平均値でみると、熱処理材は材長方向の隙間以外の 4項目で市販材よりも良い性能を示していた。なお、図16のマイナス側の値を示す個所は散水部で、膨潤して隙間が小さくなっていた。スギ市販材でも問様な個所を設定したが、熱処理材とは異なった動きで、実形状の違いが影響しているのかその要因を特定することはできなかった。

 

3.2.3 ヒノキ熱処理試験体の性能
熱耐久試験中のヒノキ熱処理試験体の幅寸法変化率を、図 18に示す。ヒノキ 140℃熱処理試験体の寸法変化は、ヒノキ市販材と比較して大きくなる傾向で、ヒノキ熱処理試験体では変化率の大きい個所で約-0.8%であったが、ヒノキ市販材では約-0.4%と熱処理試験体のほぼ半分の寸法変化で、ウレタン塗装をしている市販材の性能が良い結果であった。熱耐久試験結果のうち、幅方向隙聞の変化を図 19と図20に、長さ方向と幅方向の隙間や段差や幅反りの変化を表2に示す。幅方向隙間の変化をみると、時間の経過とともに隙間が大きくなる傾向は熱処理材も市販材も同様であったが、熱処理材は最大で0.75mm を示したのに対して、市販材では 0.59mmと小さく推移した。熱耐久試験の結果を平均値で比較すると、長さ方向や梧方向の段差や反りはほとんど違いがみられなかったが、隙間は差がみられ、良い性能を示した。

 

4. まとめ
熱処理技術による床暖房用スギ・ヒノキ無垢材の開発を検討した結果、以下の点が明らかになった。

1) 110、 130、 140℃の水蒸気でスギ材を加圧加熱処理することにより、無処理材よりも寸法安定性が高くなる傾向であった。ヒノキ熱処理材は、 140℃Cまでの温度域では無処理材と比較して寸法安定性の違いは認められなかった。
2) スギ材、ヒノキ材ともに、処理温度が高く、処理時間が長いほど、色変化が大きく、色むら(辺材と心材の色の違い)を解消できることが分かった。
3) 床暖房用床材の熱耐久試験の結果、隙間(幅方向)や段差(幅方向、材長方向)や反りにおいてスギ熱処理材はスギ市販林よりも良い性能を示したが、ヒノキ熱処理材ではヒノキ市販材の方が良い性能であった。

スギ熱処理材を用いた施工事例を図 21に示す。施工して数年が経過しているが、隙間や表面割れは発生しておらず、現状では問題は認められない。

謝 辞
試験にご協力をいただいた、アトムカンパニー株式会社、株式会社コスモ工房、株式会社ネクスト・オカモト、一般財団法人ベターリビング威氏に、深く感謝いたします。

文献
1)桃原郁夫:熱処理と耐久性,木材保存, 31(1), 3・11(2005)